アップルファームさみずの理念
理念1
人と自然が永続可能な農業をめざし、環境にできるだけ負荷をかけない農法を追及します。
理念2
果樹栽培に最適な恵まれた自然条件を最大限に生かした栽培を心がけ、見かけよりも安全・安心・おいしさを重視します。
理念3
果樹園は生産者の家族を含めた生活の場であるため、可能な限り自然に近い状態に保つよう化学肥料や農薬には極力頼らず、安全・安心を実証していきます。
理念4
私たちは次の世代へつなげていける元気の出る農業を、地域ぐるみで取り組んでいます。
1973 年に「アップル三水新流会」として思いを共有する5人のりんご農家で立ち上がった私たちは、2002年の法人化を経て、25人の生産者グループとなった今も一貫してこの理念を掲げて生産をしています。
4つの理念の中でも、もっとも重要なのは「安心安全」です。これは、りんごそのもののみならず、働く立場である私たちの暮らしの「安心安全」の意味も含まれています。2002年に有限会社アップルファームさみずとして法人化を果たした理由のひとつには、後継者不足の問題がありました。当時、生産者仲間は増えたものの、どの生産者も後継者がいない状態だったのです。そこで、将来的に見据えた結果、家族経営での難しさを法人で補うこととしました。これによって今は地域のなかに若いエネルギーも生まれ、後継者も増えています。また、法人化によって組織が確立し、職員の生活の保障も可能になりました。
安心安全へのこだわり
かつて養蚕からりんご栽培へと転換した親世代を手伝って育った5人の農家は、畑が生産の場でありながら生活の場であることを理解していました。そこで、農薬をできる限り減らした農業が、消費者にとっても子どもたちにとっても必要であると感じて、およそ40年前に「アップル三水新流会」を設立。当時、りんご栽培には大量の農薬が散布されていましたが、私たちはその量を半分から3分の1に抑え、環境に多大な負荷がかかる農薬を使用しない栽培を始めたのです。
安心安全でおいしいりんご
そして、公害問題や食の安全性に関心を寄せる主婦層を中心とした生協運動と連動し、1973年には埼玉北部市民生協との取引が始まりました。お互いに話し合いを重ねながら使用する農薬を決める二者間認証を採用することで、消費者が求める「安心安全」で「おいしい」りんごを生産してきました。
独自の農薬使用基準
現在では、アップルファームさみずとして、できるだけ環境負荷の少ない使用可能な農薬をリスト化して農薬使用基準を設け、各生産者がそれに従いながら畑ごとに病気や虫の発生状況を加味して、必要な農薬を最低量だけ散布しています。また、品種・圃場ごとに農薬使用記録を管理し、肥料の使用記録も含めて詳細な栽培履歴を取引先に伝えています。
特別栽培農産物の認証
なお、長野県でも栽培基準として一般的な農薬使用回数を定めており、ふじをはじめとする晩生種は除草剤も含めて35回分の成分が一般的とされていますが、アップルファームさみずでは除草剤を一切使わず、農薬使用回数も17回以内(実際にはさらに少ない回数を内部基準として設定)とすることで、現在は「信州の環境にやさしい農産物認証」や「エコファーマー」といった特別栽培農産物の認証を受けています。
可能な限り農薬を使わない工夫
また、害虫を食べる益虫でりんごを守る天敵資材(天敵昆虫・BT剤)や、性フェロモンの作用によって害虫の交尾を阻害し害虫の発生を抑制する「コンフューザー(交信攪乱剤)」なども使用し、可能な限り農薬を使わない工夫も行っています。
くわえて、年に一回は長野県果樹試験場の病害虫の研究員を招いての勉強会を行うほか、共同研究も実施。さらに、月に一回は生産者同士で集まって情報共有する場を設け、他県の産地や取引先への視察も行うことで、農薬を減らす努力を続けています。
こうした結果から、現在では「らでぃっしゅぼーや」や「Oisix(おいしっくす)」といった宅配サービスにまで取引先が広がりました。
りんごが届くまで
1月-3月剪定
雪が減り、厳しい冬が終わりを告げ始める1月下旬から2月の晴れた日に開始するのが、余分な枝を切り落とす「剪定」作業です。これは「整枝剪定」とも言いますが、りんご栽培の8割は、この作業で決まると言われているほど難しく重要な工程です。
何十年と栽培され続けてきたりんごの木は、これまでに剪定をしてきた人の考え方や木の状態が反映され、ひとつとして同じ形はありません。そこで、ハサミとノコギリを使ってそれぞれの木に応じた剪定をしなければいけないのですが、これは経験と勘が重要な要素になり、それによっていいリンゴができるかどうかが左右されるのです。
作業は、日焼けで真っ黒になりながら3月から4月まで続けます。この間に雪は完全に融け、剪定が終われば開花の時期が訪れます。
4月下旬-8月上旬花摘み・摘果作業
4月下旬から5月上旬にかけて花が咲くと「摘花」という花摘みの作業が始まります。これは、よい実をつけると予想できる花だけを残し、不要な花を摘む工程。りんごの花はひとつの花芽から大体5つの花が咲きますが、真ん中の中心花がもっとも早く咲き、もっともよい実がなることから、残りの4つの花を摘み取ります。
花が散って実がなると、今度は「摘果」の開始です。これは、作業としては「摘花」と同じで、不要な実を落とします。「摘花」と「摘果」、どちらも読み方は同じ「てっか(てきか)」で、少なくとも2回はすべての木に対してこの作業を行います。多い人であれば3~4回行う、もっとも時間がかかる作業です(最初の摘果は「荒摘果」、2回目以降は「二番摘果」「仕上げ摘果」と言います)。最終的にはさくらんぼ大の大きさになると、1つひとつの実の素質もわかってくるので、肥大の劣る小さいものや病気や害虫に侵されたもの、栽培に不適当な部位に実った実を選抜し、木の勢いなども判断して適正な数に調整します。
8月下旬-11月下旬収穫
摘果が終わる頃には8月に入り、りんご栽培はひと段落。8月末からは「つがる」などの早生種の収穫が始まります。1つひとつの完熟度を確認しながら手で丁寧に摘み取ります。なお、収穫前には、太陽光がりんごに当たるように必要最低限の葉っぱを取り除く「葉摘み」の作業を行う人もいます。
ちなみに、現在では有袋(袋がけ)栽培を行うりんご農家は少なくなりましたが、アップルファームさみずでは設立当初から有袋栽培を行わず、太陽光をじっくりと浴びることで外観よりも味を重視した栽培を行ってきました。また、りんごの木の下に銀色の反射シートを敷く栽培はきれいな赤い色が付きますが、これによってりんごの真の熟度が判別しづらくなるほか、地温が下がって木や根の活動が抑えられてしまうことから、私たちは自然の状態での栽培を重視しています。
8月下旬~2月末選果・荷造り・出荷
りんごの収穫は晩生種のふじが穫れる11月末まで続きます。現在、アップルファームさみずで販売している品種は15種類以上。収穫したりんごは傷の有無や大きさなどをチェックしながら1つひとつを選別し、箱詰めされてそれぞれの取引先に向けて出荷します。
なお、おいしいりんごの見分け方は品種によっても異なりますが、基本的にはりんごのお尻の部分で確認します。ここで赤色が着色していない、りんご本来の「地色」を見ることができます。この地色が黄色味を帯びたものが完熟でおいしいりんごです。また、ふじの場合はツルツルと光っているものよりもザラザラした手触りのものがおいしいと言われています。